先生のひとりごと




人間には越えられない宿命(さだめ)があります。それは、骨の長さです。特に大事になってくるのは区分ごとです。
足の長さと手の長さ、体幹の長さは比例します。この比率を保った人こそが、完璧なバランスを持った人間なのです。
あなたはしゃがめますか?
どうしてもしゃがめない人は足の長さ――詳しく述べると、膝から下の長さが足りないのです。
お気づきでしょうか?
家具屋さんにソファを買いに行って、そこではぴったりだと思って買ってきたソファが家で寛ごうと思ったらどうしても寛げない。
足をソファの上に上げたくなったり、正座をしたくなったり、胡坐をかきたくなったり、後傾姿勢をとりたくなったり前傾姿勢をとりたくなったり、片足ずつ交互に上げたくなったり。クッションやざぶとんを敷きたくなったり、背中とソファの間にクッションをあてがえたくなったりしませんか?それは膝から下の足の長さに対して、床から座面への長さが異なっているからです。
靴を履いた時点でちょうどよかったのに、裸足になるとくつろげないソファ。結論を申し上げますと、靴底の厚み分、長さが足りないのです。そのために裸足になると、(靴を履いて)ちょうどいいと感じていた地面から足が沈んでしまったのと一緒です。日本は欧米と違い裸足で過ごすために、裸足で踏み締めた地面から座面までのちょうどいい高さで、ソファを選ばなければいけません。

自分の足の長さをまずは測りましょう。
まず、裸足になって平行な地面に直立に立ちます。背筋をぴんと伸ばした状態で膝下、膝上の長さを測ります。
床との接着面から、膝の裏側にある横に入った線(関節裂隙)までの長さが膝下の長さです。
その線から、太腿にある横のふくらみ(太腿の側面を触っていって太腿の根元の継ぎ目あたりにある突起【大転子】)の上端に位置するへこみまでの長さが膝上の長さです。

   

膝上と膝下の長さをそれぞれ比べてみてください。上と下の長さが異なっているでしょうか。
膝下の方が膝上と比べて長い、となれば問題はありませんが、膝下の長さよりも膝上が長い、といった場合の人は、前者に比べてしゃがみづらいと感じているはずです。膝下が膝上よりも長ければそれだけ安定します。膝下と膝上の長さの差で最も安定しているのは8cm。長ければと言っても長すぎてはバランスがとれません。せいぜい6~10cm差までが好ましいでしょう。
足の全長(足の裏面から大腿骨のてっぺんまで)が80cmだったと仮定します。
正常範囲内は6cmから。図ではそのギリギリラインである、37cm:43cmを示しています。(これも80cmと同じく仮定のために80cmとした場合37cm、43cmではないとダメということではありません)しかしながら安定する8cm差のためには、下の長さはあと2cm足りないこととなります。そこで必要となってくるのが、「補足」と呼ばれる行為です。2cm足りないとなっても2cm骨を伸ばすだなんてそうそうできることではありません。そのために2cm靴底のある靴(ヒールなど)を履けば、膝下の長さと膝上の長さの差は6cmから8cmへと変化します。

さて、自分に最も合った椅子の選び方、机の選び方をご紹介しましょう。
膝下の長さより約6~8cm低い椅子に座ると楽に座ることができます。無論、その場での用途に合わせて考えましょう。常に裸足でいるリビング用のソファと、常に靴を履いたまま座るオフィスチェアでは、靴底分の長さが関係してきます。また、机はその椅子に座って背筋をぴんと伸ばした状態から、腕を直角に曲げた肘のラインから平行に伸びた線の延長上です。最も腕を置きやすい状態から肘のラインを辿りましょう。

   

人間の体格は個人差があります。
しかしながら会社、学校など、人間が過ごさなければいけない場において椅子や机の高さはすべての人に等しく固定されています。自分の体格に合った椅子選び、机選びもできずに無理やり合わない環境で座り続けていれば姿勢も悪くなり、身体が痛くなるのは当然なのです。皆さんも自身に合った靴、椅子、机などを見極め、自然体のまま楽に過ごすことのできる環境をつくりましょう。